Column コラム

Vol.15【全国各地で相次ぐ連続強盗事件から考える防犯対策について / 新型コロナ”5類"引き下げから考える見直し対策について】

今回のコラムでは、以下のラインナップでお送りいたします。


全国各地で相次ぐ連続強盗事件から考える防犯対策について<前編>

全国で相次いでいる組織的な広域強盗事件について、警視庁は14都府県で50件以上が同一犯による事件だと疑われるとして捜査を継続中です。
またSNSの交流サイトを利用し集められたメンバーは、高額報酬と引き換えに「闇バイト」として犯罪を行ったことが判明しています。更に強盗事件のみではなく、特殊詐欺事件としても被害総額が60億円以上にのぼることが捜査にて判明しました。
さらに一連の事件の指示役としてフィリピンに滞在していた4名が日本に強制送還されています。
全国各地で相次ぐ連続強盗事件から考える防犯対策について、弊社顧問である西岡敏成氏に話をうかがいました。
※本内容は西岡氏へのインクピューを基に再編集したものです。

1:強盗事件にかかわる罪状

今回の広域強盗事件ではすでに容疑者60人以上が逮捕されていますが、この事件には「組織犯罪」が適用される可能性があります。
犯罪組織の一員として犯罪に関与すると「組織犯罪処罰法」が適用され、個人が単独で同様の犯罪を行った場合よりも重い刑に処せられる場合があります。
▼組織犯罪の凶悪性
組織犯罪の恐ろしさのひとつは行動に歯止めがきかなくなり凶悪化しやすいという点です。
集団心理、群衆心理が働くために間違った方向に誰かが進むと組織全体が引きずられてしまい「みんながやっているから」と罪悪感も薄れやすくなります。このような罪悪感の薄れから組織としての凶悪性が増大しやすくなる傾向があります。
また、組織団結のために服従関係を強いられ、裏切りには暴力的な制裁を与えるなど粛清行為を見せつけられることで、徹底的に恐怖を植え付けられて組織を抜けられないように仕向けられるといった怖さがあります。

▼法定刑から見る組織犯罪
前述の通り、今回の事件は指示役が存在して組織犯罪として各地で強盗を行っている点が特徴で、組織犯罪処罰法が適用される可能性があります。
組織犯罪処罰法は一定の犯罪が組織的に実行された場合に刑法の規定よりも重い刑を科す旨を定めた法律で、組織犯罪に関しては単独犯としての通常の刑罰よりも1.3倍から1.4倍程度の重い刑罰が科されます。

2017年(平成29年)の刑法改正ではテロ等準備罪が新設され、犯罪の計画・準備段階で処罰できるようになりました。
テロ等準備罪には3つの要件があり「(1)組織的犯罪集団」が「(2)重大な犯罪を計画」して「(3)計画を実行するための準備行為」を行うことです。
組織的詐欺などもテロ等準備罪の対象に含まれています。

▼インターネットを活用した犯罪の取り締まりの現状
今回のような犯罪が起きてしまう原因として、振り込め詐欺などの取り締まり強化や匿名性のSNSアプリの普及などが考えられますが、残念ながらこうしたインターネットを活用して行われる犯罪を事前に取り締まることはなかなか難しいのが現状です。
例えばAIの自動検出機能を活用した闇バイト募集サイトの捜査などはすでに行われていますが、該当する可能性のある投稿を見つけたとしても実際に取り締まりを行えるかというと難しい部分があります。
なぜなら刑法上の犯罪は「人を殺した」「他人の財物を窃取した」などの犯罪構成要件を満たし、それが違法であり、行為者に責任を問える、この3要件がそろわないと成立しないからです。
闇バイトと思われる「日当100万円」といった高額な報酬が記載されており危険性があると思われるものでも、構成要件を満たさなければ違法性があるとは言えず、対応が後手に回ってしまう構造があります。
今後はこのようなグレーゾーンの事例について逮捕はできなくても警告や拘束ができるようにするなど、予防につながる法律の整備や現行法の拡張解釈などを行う必要があります。
人の生命や身体を守るために柔軟に対応できるょうな法整備と運用が求められています。

2:従業員が組織犯罪などに巻き込まれないためには

今回の広域強盗事件では、いわゆる‘闇バイト’に応募して組織的犯罪に加担してしまった人たちもいます。
このような組織犯罪にいったん加担してしまうと途中で抜けることができないという危険性もあります。従業員が組織犯罪に巻き込まれないようにするための対策について考えてみましょう。

▼組織犯罪へ加担してしまう原因
組織犯罪に加担してしまう原因の一つとして経済的な格差が考えられます。
20~30代の非正規職員の数は多く、正社員と比較した場合年収ベースで300万円もの差がつく場合もあります。
このような経済的な格差のもと受験や就職の失敗、経済条件の悪さから恋愛や家庭などプライペートでの不調を抱えるなどの状況が重なった時に、
SNSなどを通じ知った新興富裕層の暮らしぶりに憧れ、一足飛びでその状況を手に入れて欲求を満たそうとし、危険性を理解しながらも一部の人たちが最終的に高単価な闇バイトに手を出してしまうと考えられています。

▼従業員が巻き込まれないための対策
組織犯罪に加担してしまう根本的な原因には生活面での困窮があると考えられます。
企業として生活困窮にならないような給与•福利厚生の充実にも取り組むことが重要です。
また対策として従業員が気軽に相談できる窓口を組織内に設置することが望ましいでしょう。
闇バイトに加担しそうになったり、あるいは接触してしまい抜けられなくなった場合などにも、現状を打ち明けられる場所を設置し、そのような場所があることを告知して認知を高めることが重要です。
さらに社員教育としてSNSを使った闇バイトの怖さなどの事例を踏まえて伝えておくことで事前理解を深め、従業員自身の危機管理能力の向上に努めましょう。


全国各地で相次ぐ連続強盗事件から考える防犯対策について<後編>

これまで強盗事件の「闇バイト」に関してや従業員が闇バイトに巻き込まれないための注意点を確認してきました。
ここからは今回の広域強盗事件を踏まえ、企業が防犯対策として注意すぺき3つのポイントを紹介いたします。

ポイント1:防犯カメラの効果的な設置方法

一般的な犯罪対策として防犯カメラの設置は効果があると考えられ、撮影した映像は重要な証拠になります。防犯カメラが最大限の効果を得るための設置ポイントとしては
・作動していることを知らせる掲示などを行う
・簡単に破嬢されないように、手が届かない位雷や分かりにくい場所に配置する
などがあります。
ただし、前編で事例として取り上げた広域強盗事件のように確信を持って実行される犯罪には効果が薄くなる可能性があるため、日ごろから防犯対策に取り 組み備えておくことが必要です。

ポイント2:被害が起きないようにする水際対策

被害を未然に防ぐには、不審者の侵入を食い止める水際対策を立てることが重要です。
まずは、建物として防犯強度を高めることが大切です。
ビル全体に1社だけが入っている場合は警備員や受付を立て、ビル内に入ってくる人物が必ず人の目に触れる環境作りを心がけましょう。
またビルに複数の企業が入っているケースではやや複雑です。自社専用の受付や警備員を立てることができず、不審者が直接企業に訪問できてしまう可能性があります。この場合入室にあたってIDチェックやパスワードなどのシステムを設置することを検討し、不審者が部屋ヘアクセスするまでに何らかの障壁を導入しておくことが重要となります。
また同時に地域と連携していくことも防犯において重要です。一般的にゴミがなく町並みが整然とした地域では犯罪が起きにくい傾向にあります。地域 で防犯を呼びかけるのぼりを立てるなども効果的です。事前に情報を得るために犯罪者が現場を訪れる可能性も考慮し、普段から地域と協力した防犯対策を立てておきましょう。

ポイント3:防犯対策における注意点

事件の兆候などに気づきやすいように備える
防犯対策においては一次対策が重要で、従業員が常に防犯意識を高く持つように周知しましょう。
例えば無言電話が来たら簡単に済ませるのではなく、事件の前兆としてとらえるといった意識が大切です。
また不審物が見つかりやすくなるように、職場に不要物を置かず環境を整えておくなどの取り組みが重要です。

 

3:社員を守る意識を持つ

不審者が会社に入ってきた際に、最初に接触するのは社員です。
不審者から社員を守るという意識をもって対策を立てることが重要です。
また「戦う」のか「逃げる」のかといった対応の方針を事前に決めて周知しておく必要があります。
不審者との接触も含め対応をするためには、催涙スプレーやさすまた、盾などの専門的な防犯グッズを準備するか、用意できない場合は椅子をさすまたとして使用する対策などを教育しておくことも大切です。
消火器も威圧するために効果的ですが、燃焼物への対応として様々なタイプの消火器を用意しておくことが効果的です。
さらに防犯グッズだけでなく不審者から身を守れる場所として、従業員が逃げ込めるような避難部屋を作っておくのが理想です。
今回の強盗事件のように組織で確信的に犯罪行為を行うといった危険性の高い事件が近年見受けられます。
従業員がそういった犯罪に巻き込まれないためにも、相談窓口の設置や福利厚生を充実させるなど企業として組織犯罪へ参加する動機や場面を減らすための備えを行っておくことが必要でしょう。
また強盗などいつどのような危険が会社を襲うのかを予測することは出来ません。
そのためにあらゆる事態を想定し、事前に対応方針を立て、カメラの設置や地域との連携など社員の命を守るための取り組みを行いましょう。

 


新型コロナ”5類"引き下げから考える見直し対策について

新型コロナの感染症法上の位置付けについて、 政府の対策本部はインフルエンザなどと同じ感染症法上の「5類」に2023年5月8日から移行されました。
5類に移行により制限は減りますが、さらなる感染拡大や医療のひっ迫を招くのではないかという懸念もあります。
今後、私たちは新型コロナとどのように対峙していけばよいのか、議論のポイントと、乗り越えるべき課題を考えます。

1:「2類」と「5類」の違い

感染症法では、感染症を感染力と重症化リスクに応じて1類~5類と指定感染症、新感染症の7種類に分類しています。「1類」は命の危険性が極めて高いエボラ出血熱やペスト「2類」は重症化リスクや感染力が高い感染症の結核、SARS(重症急性呼吸器症候群)など「5類」は季節性インフルエンザ、麻しんなどが該当します。
新型コロナもオミクロン株の特性が把握されてきたことや、致死率の低下などが5類引き下げへの理由として考えられます。

2:「5類」への見直しでどう変わるのか?

1.一般の医療機関でも入院や診察が可能となる。
これまでは自治体が病院に要請し、コロナの病床を確保してきました。5類に移行後はこの枠組みがなくなり、どの病院でも入院や診察が可能になります。 同時に要請がなくなることで今までコロナを診察していた病院が受け付けなくなる可能性もあります。

2.医療費負担について
「5類」に分類されると、国や自治体による入院の勧告、就業制限、外出自粛の要請はなくなりますが、検査や治療の費用は公費でまかなわれなくなり、個人負担が増加することが懸念されています。(公費による段階的な補助も検討されているようです)

3.行動制限解除における対策の見直しについて
これまで行われてきた緊急事態宣言や、まん延防止措置、更に感染者や濃厚接触者の外出自粛要請といった行動制限がなくなり、イベントの開催緩和、行動規制の緩和が行われます。
しかしここで忘れてはならないことは「5類に移行してもウイルスの脅威自体は変わらない」ということです。感染防止のための対策の見直しなどを行う必要が考えられます。

3:「5類」引き下げにおいて企業が注意すぺき点とは

これまで新型コロナの対策に関しては概ね国の方針に従う必要がありましたが、5類引き下げによって企業で独自の方針を立てる必要に迫られることになります。
重要なのは「5類に移行しても感染の拡大の脅威が極端に下がったわけではない」ということです。治療費の自己負担が発生することで受診率が下がるのでは?高齢者への対応はどうするかなど、さまざまな想定を行った上で対策を立てる必要があるでしょう。
加えて感染対策などについて従業員に対しては企業の方針を提案するにとどめ、従業員の行動に関しては個人による判断理由を尊重しなければなりません。
また、企業でコロナ対策を考える際に下記の3点に留意しましょう。
1点目は、人流が増えたことによるオペレーションの対応です。人数制限の緩和によって、コロナ禍よりも多くの人流に対応する必要があります。
事前に想定される人数を考慮し、現状オペレーションでの問題点の洗い出しと人材の確保や新たなオペレーションの策定を行い、万全な対応ができる体制の構築を行いましょう。
2点目は、逆マスク警察の存在です。マスク着用を強要するマスク警察とは反対に、マスクの着用をやめるように他者に強要する事案が起こりうることが懸念されます。
厚生労働省の発表によるとマスク着脱に関しては個人の判断に委ねられることになるため、個人の主体的な選択を尊重し、本人の意思に反してマスクの着脱を強いらないような配慮が必要とされています。また組織内で も従業員が安全に働ける環境を整えるという安全配慮義務も考慮しなければなりません。そのため、マスク着脱は個人の判断として尊重することを組織内に周知し、一方で感染予防の観点から例えば混雑した電車やバスのなど マスク着用が推奨される状況を伝えることで個人判断を尊重した企業としての感染予防の方向性を示しましょう。
3点目は、組織内クラスター防止対策です。5類への引き下げにより感染予防への意識が低下することによって、一時的な感染の再流行を引き起こしてしまう可能性があります。
再流行によるクラスタ発生を防ぐためにも一度にすべての感染対策を解除するのではなく、段階的な解除や手洗いなど日常的に行える基本的な感染予防対策については継続するよう呼びかけなどを行いましょう。
新型コロナの5類へ引き下げによる社会の変化が考えられます。その中で企業として対策の方針を独自に立てていくことが重要となります。また危機管理 としてメディア報道への向き合い方も「クライシスコミュニケーション」の観点から事前に対策の構築を検討しましょう。

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