Column コラム

Vol.35【企業を守る防犯カメラ~知っておくべきリスクと対策】

今回のコラムでは、以下のラインナップでお送りいたします。


 

はじめに

現代の企業において、セキュリティの重要性は増し、効果的な監視システムの導入が求められています。犯罪の抑止、従業員の安全確保、そして企業資産の保護に大きな役割を果たす防犯カメラの設置は、単なる監視目的にとどまらず、企業の信頼性向上やリスク管理の一環としても機能します。

防犯カメラの性能は、監視の質に直結し、高解像度のカメラや夜間撮影に対応したカメラは、より詳細な映像を記録することができます。また、ネットワークカメラを導入することで、遠隔地からの監視も可能になります。

このように、防犯カメラの設置は企業に求められるセキュリティ水準を満たすための重要な構成要素になっています。一方でリスクについてきちんと管理しておく必要があり、メリットを最大限に生かすためにも注意すべき点を把握するようにしましょう。

防犯カメラを設置するにあたっては、高解像度のカメラによるプライバシーの侵害、個人情報保護法の違反などの法的リスクに加え、ネットワークカメラのハッキングによるデータ漏洩などのリスクも無視することはできません。防犯カメラの映像が誤用されることで、従業員や訪問者の信頼を損なう可能性があり、カメラの存在が職場環境に悪影響を与えることもあります。

これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。先日、韓国軍に設置されていた中国製監視カメラが中国のサーバーに接続され、リアルタイムで中国にデータが転送されるように設定されていたことが確認されました。このように、防犯カメラには想定外のリスクも存在します。そこで、今回は防犯カメラにおけるそれぞれのリスクと対応策を具体的に解説していきます。

 

1.防犯カメラ設置にかかる法的リスク

防犯カメラの設置や運用にあたって法的リスクを理解し、適切な対策を講じることは、安全かつ効果的なセキュリティ対策において非常に重要です。

 

(1)プライバシーの侵害

防犯カメラは、個人のプライバシーを侵害する可能性があります。特に高解像度のカメラは、必要以上の情報を記録し、個人を特定できる映像を撮影することがあり、個人のプライバシーが不当に監視されるリスクがあります。

カメラの設置場所や角度を慎重に選び、プライバシーを侵害しないようにする必要があります。たとえば、トイレや更衣室などのプライバシーが特に重要な場所にはカメラを設置してはいけません。また、設置目的を明示し、必要最小限の範囲を監視することで、プライバシー侵害のリスクを低減します。

 

(2)個人情報保護法の順守

防犯カメラで撮影された映像が個人情報に該当する場合、個人情報保護法に基づく適切な取り扱いが求められます。利用目的を明示せずにデータを収集・利用すると、法的問題が発生する可能性があります。

映像の利用目的を明示し、必要に応じて本人の同意を得ることが重要です。たとえば、従業員や訪問者に対してカメラの設置場所や録画の目的を事前に通知し、同意を得るプロセスを確立します。また、データの保存期間やアクセス権限を明確に定め、適切に管理することで、個人情報保護法の順守を徹底します。

 

(3)労働法の順守

職場に防犯カメラを設置する場合、従業員のプライバシーへの配慮が必要です。過度な監視は従業員のストレスを増加させ、労働環境を悪化させる可能性があるほか、従業員の同意なしに監視を行うことは、労働法に抵触するリスクがあります。

この点についても、従業員に対してカメラの設置目的を説明し、同意を得ることが重要です。たとえば、従業員の休憩室や個人のデスク周りにはカメラを設置しないようにし、監視範囲を限定します。また、監視の目的が安全確保や犯罪防止であることを明確に伝え、従業員の理解と協力を得ることが必要です。

 

(4)地方自治体のガイドライン

施設の外側に向けた防犯カメラの設置については、地方自治体ごとに防犯カメラ設置に関するガイドラインが制定されており、自治体によって内容が異なる場合があります。これらのガイドラインに従わないと、罰則を受ける可能性もあります。

設置前に地方自治体のガイドラインを確認し、順守することが重要です。たとえば、自治体のウェブサイトや担当部署に問い合わせて、最新のガイドラインを確認し、それに基づいて設置場所や運用方法を決定し、必要な手続きを行います。

 

(5)映像データの管理

映像データの管理が不適切だと、データ漏洩や不正利用のリスクが高まります。特に、第三者への提供や目的外利用は法的問題を引き起こす可能性があります。

データの保存期間の設定、不要なデータの削除、アクセス権限の厳格化、データの暗号化を行うことで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを低減します。


2.防犯カメラ設置にかかる運用のリスク

LINEUP1では防犯カメラを設置するときに気を付けるべき法的リスクについてお話しました。LINEUP2では、設置コストと運用リスクについて詳しく解説していきます。

 

(1)コストとメンテナンス

企業が防犯カメラを設置する際には、初期費用だけでなく、維持管理にかかるコストやメンテナンスのリスクも考慮する必要があります。

 

ア.設置コスト

高解像度カメラや特殊機能を持つカメラは高価で、設置には専門業者による工事が必要です。カメラ本体の費用に加え、カメラの設置費用も必要となります。

設置時に考慮すべき費用項目

  • カメラ本体の費用
  • 設置工事費用
  • 配線工事費用
  • 録画装置の費用
  • モニター等の周辺機器費用

ネットワークカメラを利用する場合、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器が必要です。そのほかにも、映像データを保存するためのストレージが必要であり、クラウドストレージを利用する場合は月額で料金が発生します。オンプレミスのストレージを使用する場合、初期費用が高くなります。

 

イ.維持管理コスト

防犯カメラの性能を維持するためには、定期的な点検と保守管理が必要です。カメラや関連機器が故障した場合には修理費用がかかり、カメラの寿命や技術の更新に応じた定期的な交換も求められます。

 

(ア) 定期点検費用

カメラレンズの清掃、角度調整、配線の確認などの定期点検が必要です。専門業者に依頼する場合、年間契約で点検費用が発生します。

 

(イ) 修理・交換費用

屋外設置のカメラは特に劣化が早く、3〜5年程度での交換が必要になることがあります。技術の進化に伴い、より高性能な機種への更新も検討する必要があります。

 

(2)データ管理

定期的なデータの管理と保護を徹底することにより、企業の安全性を高めることができます。

 

ア.ソフトウェアの更新

ソフトウェアの更新を怠ると、セキュリティホールが放置され、ハッキングのリスクが高まります。定期的なソフトウェア更新を行い、最新のセキュリティパッチを適用することが必要です。

 

イ.データ管理の重要性

映像データの管理が不適切だと、データ漏洩や不正利用のリスクが高まります。データの保存期間を設定し、不要なデータは速やかに削除します。アクセス権限を厳格に管理し、データの暗号化を行うことで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを低減します。クラウドストレージを活用することで、データのバックアップや災害時のデータ保護も強化できます。


3.防犯カメラ設置にかかる情報漏洩のリスク

LINEUP1と2では、防犯カメラの設置・運用について詳しく解説しました。LINEUP3では、情報漏洩リスクとその対策について解説します。

先日、韓国軍の前方部隊に設置されていた監視カメラの中から中国製部品が見つかり、約1300台を撤去したという報道がありました。その後の調査によると、監視カメラで撮影された映像情報がリアルタイムでそのまま中国に転送される設定となっていたことが確認されました。

防犯カメラの設置には、情報漏洩のリスクが伴いますが、セキュリティの重要性と情報漏洩の危険性を認識し、適切な対策を講じることでこれらのリスクを大幅に低減することができます。

 

(1)情報漏洩の主なリスク

 

ア.ハッキングのリスク

ネットワークカメラはインターネットに接続されているため、ハッキングの対象となる危険性があります。特に、初期設定のパスワードをそのまま使用している場合や、ファームウェアが更新されていない場合、ハッキングリスクが高まります。

ハッキング対策の基本

  • 初期パスワードの変更
  • 定期的なパスワード更新
  • ファームウェアの最新化
  • セキュリティパッチの適用

 

イ.データの盗聴と改ざん

無線LANを使用する場合、通信データが盗聴されたり改ざんされたりするリスクがあります。これにより、映像データやパスワードなどの情報が外部に漏洩する可能性が生じます。通信を暗号化や外部からのアクセスを制限に加え、VPNを活用して通信の安全性を強化します。

 

ウ.管理者アカウントの乗っ取り

不正アクセスにより管理者権限を奪われると、録画データの不正ダウンロードやカメラの不正操作が行われる危険性があります。ウイルス対策ソフトを最新の状態に保ち、ネットワークカメラにアクセス可能な端末を制限することが重要です。また、管理者アカウントのパスワードを強力なものに設定し、定期的に変更することが推奨されます。

 

エ.映像データの流出

ハッキングによりカメラの映像データがインターネット上に流出することがあります。これにより、個人のプライバシーが侵害され、犯罪に利用されるリスクがあります。映像データの暗号化、アクセス権限を厳格な管理に加え、信頼性の高いクラウドストレージサービスを選択し、セキュリティ対策を徹底することが重要です。

 

オ.ソフトウェアの更新不足

ソフトウェアの更新を怠ると、既知の脆弱性が修正されず、ハッキングのリスクが高まります。定期的にソフトウェアを更新し、最新のセキュリティパッチを適用することが必要です。自動更新機能を利用することで、更新の漏れを防ぐことができます。


4.まとめ

防犯カメラの設置は企業のセキュリティを強化し、犯罪抑止や従業員の安全確保に大きく貢献します。しかし、その一方で法的リスク、運用コスト、情報漏洩の危険性といったさまざまなリスクも伴います。

防犯カメラに限らず、ネットワーク機器、スマートデバイス、IoT機器の導入によっても情報漏洩のリスクが生じます。特に、中国製の機器に関しては、バックドアが仕込まれている可能性が指摘されており、情報が無断で外部に転送されるリスクが懸念されています。企業は、機器の導入に際して、そもそも信頼性の高いメーカーの製品を選定し、その上でセキュリティ対策を徹底することが重要です。また、定期的なセキュリティ監査やソフトウェアのアップデートを行い、最新のセキュリティ脅威に対応することが求められます。

これらのリスクを総合的に認識し、適切な対策を講じることで、情報漏洩のリスクを最小限に抑え、企業のセキュリティを強化し、従業員や訪問者の安全と安心を確保することができるのです。

 

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