Column コラム

Vol.22【オーナー企業が陥るガバナンス課題~弱点とその解決策~】

今回のコラムでは、以下のラインナップでお送りいたします。


現状の認識とオーナー企業に見られるガバナンスの問題点

帝国データバンクの調査によると、日本企業のうち代表者と筆頭株主が一致する企業(オーナー企業)はおよそ77%にものぼるのが現状です。性加害問題とそれに関連した一連の騒動が話題となっている大手芸能事務所や、不正請求問題が発生した大手中古車販売会社もオーナー企業です。こういった問題の根幹にあるのは、オーナー企業特有の課題に大きく起因しているといっても過言ではありません。
今回は、オーナー主導のビジネスモデルの特徴、さらにはオーナー企業におけるガバナンスの課題について、弊社顧問である西岡敏成氏に話をうかがいます。
※本内容は、西岡氏へのインタビューを基に再編集したものです。
 

1:オーナー主導のビジネスモデルの特徴とメリット

オーナー企業とは、個人または少数のグループが、大部分またはすべての株式を所有し、同時に経営権を行使する権利を持っている企業を指します。オーナー企業には以下のようなメリットがあります。

・ビジネス目標を共有しやすい:
経営権が集中している分、ビジョンやビジネス目標を従業員と共有しやすいため、企業文化の形成が容易です。オーナーの意向や価値観を伝えやすく、従業員全体に共通の方向性が生まれやすくなります。

・迅速な意思決定で市場優位性を確保できる:
オーナーの意向が経営における重要な決定に反映されやすいため、迅速な意思決定が可能です。そのため、市場や顧客嗜好の変化にすぐに対応でき、市場における競争力を向上させられます。

・成功へのコミットメントが高い:
多くの場合、企業のビジョンや目標がオーナーの個人的な情熱や信念に根ざしています。オーナー自身が直接経営に関与していることも多いため、組織と自身の成功が直接つながっており、成功へのコミットメントが非常に高いと言えます。

・資本投資を効率化できる:
オーナーは資本をどのような配分でプロジェクトに投資するかについて最終的な決定権を持ちます。また、自身の資本を運用する際に制約が少ないため、市場の変動や顧客の要求に柔軟で迅速なリソースの確保ができ資本投資を効率的に行えます。

・社内の一体感、モチベーションが向上する:
経営者と従業員が直接的なコミュニケーションを取りやすいため、意思決定の過程や理由が明確になり、組織の一体感やモチベーションの向上につながります。

 

2:ガバナンス課題から生じる具体的なリスク

企業の経営の核となるガバナンス。オーナー企業や家族経営の企業には特有の課題が存在します。昨今話題となっている某大手芸能事務所の長年にわたる性加害問題も以下のようなことが起因している可能性があるといえるでしょう。

リスク1
経営の透明性不足や意思決定の独裁化:
オーナー企業におけるガバナンスの課題として、意思決定の中心化と感情の介入によって適切なビジネス判断ができなくなる可能性が考えられます。
意思決定の集約が進んでいるがゆえに独裁化を招き、オーナー一人の意見や判断が組織全体に悪影響を及ぼすリスクを生みます。加えて、経営判断の過程や背景が不透明になることで、投資家や取引先との信頼関係が崩れる恐れがあります。

リスク2
後継者問題やリーダーシップの一元化:
経営の一元化は迅速な決定を可能とする反面、多様な視点や意見が排除され、リーダーシップの更迭や後継者の選定に困難が生じます。適切な後継者の不在や社内での後継者選びに関する摩擦が経営の安定性を損なう可能性があります。

リスク3
ステークホルダーとのコミュニケーションギャップや、内部監査・内部統制の欠如:
企業に関する情報が不透明になってしまうことで、ステークホルダーとの間に格差ができたり、内部の不正行為が見過ごされたりするリスクが高まります。結果として、ステークホルダーとの信頼関係構築に支障をきたし、企業の評価低下や法的リスク、業績悪化が懸念されます。それに起因して企業のブランド力低下や人材不足の問題が浮上することも考えられます。さらに、オーナー個人に依存している場合、従業員のスキル向上につながらない等、企業の競争力の低下を引き起こす可能性も考えられます。

ほとんどのオーナー企業は、オーナー自身が経営者でもあるため、経営の実権を握っています。これが悪く働いてしまうと経営の独断専行が起こり、方向性を誤る恐れがあります。特にオーナーが地位や権力に固執していると「自身の意見が絶対だ」と考えてしまいがちです。そうなると、他者が自分に合わせるべきという考えのもと、自分の意見を押し通してしまいかねません。
こういった問題は、中長期的な経営戦略の策定やステークホルダーとの関係構築に影響を及ぼし、企業の成長や持続的な成功を阻害する要因となってしまいます。


 

 


オーナー企業の課題解決策とその取り組み

LINEUP1では、オーナー主導のビジネスモデルの特徴と、それに伴うリスクを詳しく見てきました。経営の透明不足や後継者問題、内部監査・内部統制の欠如などは、今後の企業存続を大きく左右する重要な課題です。
それでは、これらの課題に対し効力を発揮する解決策は何でしょうか。引き続き弊社顧問である西岡敏成氏に話をうかがいます。

 

1:経営の透明化:経営情報の公開やステークホルダーとの対話の場の設定

オーナー企業や家族経営では、経営の透明化への取り組みが特に重要です。まず、経営状況や経営戦略を公開することで、外部からの信頼を深められます。
最近では企業に都合のよい情報だけでなく、経営状況や従業員の働き方などさまざまな情報を開示してほしい、という声が多く聞かれます。企業は従業員を含め、広く顧客や取引先などにも真摯に向き合い、経営の透明化を目指すことが大事です。
また、ステークホルダーとの対話の場を設けることは、経営の方向性や課題に関する直接的なフィードバックを得られる重要な機会です。これらの取り組みは、持続可能な成長と信頼関係の構築に不可欠です。

 

2:外部からのアドバイザリーボードの導入や、独立した取締役・監査役の採用

オーナー企業における経営の透明化や多角的な意見の取り込みの具体案として、外部アドバイザリーボードの導入や独立した取締役・監査役の採用があります。これらは経営者の意見だけが尊重されるリスクを回避でき、あらゆる視点を融合させたビジネス経営の実現に寄与します。

1.外部アドバイザリーボード:
専門家や経験豊富な外部者からの助言や意見を直接取り入れるための組織で、企業の課題や戦略に対する新しい視点や知識が得られます。

2.独立した取締役・監査役:
オーナーや経営陣との利害関係がない外部者を取締役や監査役として採用することで、経営の公正性や透明性が向上し、経営判断のバランスが取れるようになります。

このように専門家や外部取締役などを採用することのほか、権力の乱用や間違った判断をしないためにも、実績や経験が豊富で、周囲からも信頼が厚く、オーナーに反対意見を言える中堅社員を参謀として採用し、直接意見を聞くことも選択肢となり得ます。従業員が、オーナーに率直な意見を言える体制を整えることは、経営者と部下の間にある表面化しにくい認識の齟齬を埋めることにもつながります。

これらの取り組みは、企業のガバナンス強化とステークホルダーとの信頼関係を深めるための有効な手段です。独自の経営スタイルの良い面を維持しつつ、経営の質をさらに高めるための戦略として検討すべきテーマです。

 

3:後継者教育や経営陣の多様化:リーダーシップの分散と組織全体の意識向上

オーナー企業や家族経営の長期的な成功のためには、次世代のリーダー育成と経営の多様化が不可欠です。

1.後継者教育:
企業の文化や価値を受け継ぐだけでなく、外部の教育機関や他企業での経験を通じて、広い視野や異なる経営手法を学ばせることが重要です。これにより、新しい風を取り入れつつ、伝統を守るバランスが保たれます。

後継者の育成は、企業文化や価値を受け継いでいくという意味で、相続と同じと言えます。相続の「相」は、オーナーそのもののビジョンや考え方、ビジネスへの姿勢や努力の様子であり、それらを引き継いでいくことが後継者の役割です。次の優れた後継者を育成するには、まずはオーナー自身が模範となる姿を見せることが重要です。

2.経営陣の多様化:
一元的なリーダーシップではなく、多様な背景や専門知識を持つメンバーを経営陣に取り込むことで、幅広い意見や視点が経営判断に反映されるようになります。
リーダーシップの分散は、組織全体の意識や動きを活性化させ、企業の柔軟性や適応力を高めます。

経営陣の多様化と後継者教育は、企業が未来の変化に対応しながら、安定的な成長を続けるための鍵となる要素です。

 

4:内部監査・内部統制の強化:企業リスクを早期にキャッチし、対策を講じる

オーナー企業がこれからも成長・繁栄するには、内部監査・内部統制の構築と強化が極めて重要です。不正行為を防ぎ、コンプライアンスの尊寿を確保することは、業務効率向上やステークホルダーとの信頼性向上はもとより、優秀な人材確保にもつながる重要な対策です。

1.早期のリスク検出:
強固な内部監査体制は、経営上のリスクや不正行為、ミスを早期に検出する仕組みです。これにより、問題が顕在化する前に適切な対応が可能となり、企業の損失を未然に防げます。

2.経営の透明性の確保:
内部統制の強化は、業績の透明性や業務の効率性を向上します。ステークホルダーとの関係も強化され、企業価値の向上にも寄与します。

3.従業員の意識向上:
内部監査・内部統制の存在は、正確な業務実施や経営方針への理解・協力が促進され、従業員の行動や意識に正の影響を及ぼします。
 
一度構築した体制は定期的な見直しと更新を行いながら、企業の変化や環境の変動に柔軟に対応していくことが大事です。

 

 


未来のオーナー企業の在り方と期待

LINEUP2では、オーナービジネスモデルに潜む課題と効果的な解決策について、詳しく見てきました。
オーナー企業が継続して次の世代に経営をつなげていくためには、後継者教育や経営陣の多様化に加えて更に権限委譲も必要です。このような体制は一度構築しても時代や市場ニーズの変化に合わせて常に見直しをしていく必要があります。今回は、オーナー企業が目指すべき経営の形とはどのようなものなのか、未来のオーナー企業の在り方について、引き続き弊社顧問である西岡敏成氏に話をうかがいます。

 

1:ガバナンスを強化することの真の価値と、それによって得られる持続的なビジネスの成長

オーナー企業の持続的な成長のためにガバナンス強化は不可欠です。ガバナンスの真の価値は、単なるリスク回避だけでなく、企業とステークホルダー間の信頼構築にも寄与することにあります。たとえば意思決定のプロセスを透明化することで、ステークホルダーがビジネス戦略の背景や方向性を理解できます。経営透明性の向上は、従業員、顧客、そしてビジネスパートナーとのより良好な関係維持に役立ちます。

ガバナンス強化には、他にも日頃から事業やプロジェクトに対し権限の委譲を意識した組織作りを行うことが含まれます。オーナーに病気や事故が発生した場合でも、権限の委譲を行っておけば効率的な意思決定が速やかで、組織が崩れることなく維持存続していくことができます。また、業務プロセスの効率化や責任の所在の明確化にもつながるため、従業員が誇りとやりがいを持って業務に臨めます。

未来を見据えたオーナー企業は、ガバナンスの重要性を理解し、その強化に努めることで時代の変化にも柔軟に適応でき、永続的な成長を実現する道を切り開くことが出来るのです。

 

2:企業価値の向上とステークホルダーとの信頼関係の構築

未来のオーナー企業の成功の鍵は、企業価値の持続的な向上とステークホルダーとの信頼  関係の深化にあります。

企業価値は、質の高い製品やサービスの提供、効率的な運営と財務状況の改善、人的資本への投資によって向上させられます。しかし、これだけでは十分ではありません。企業が持つ社会的役割を認識し、その役割を果たす行動によって真の企業価値を生み出せるのです。

ステークホルダーとの信頼関係の構築には、経営の透明性と責任の所在の明確化が不可欠です。透明性の確保は、企業の信頼性に大きく関わります。オーナー自身が従業員の意見を傾聴し、企業に潜む課題を顕著化させてステークホルダーと情報を共有し、従業員に権限を委譲しながらその課題解決に邁進する、それがオーナーに求められることではないでしょうか。

これらを継続的に実践することで、従業員を含むステークホルダーとの間に強固な絆を築くことができ、企業の持続的な成長と繁栄をサポートしてもらえる体制につながります。
未来のオーナー企業は、社会的価値の創出とステークホルダーとの関係性を中心に、その戦略を策定し実行することが求められるのです。

 

3:21世紀のオーナー企業が目指すべき経営の姿と、そのための継続的な取り組みの重要性

未来のオーナー企業が目指すべきは、持続可能な経営の体制作りと取り組みの継続化です。これには、「革新的な思考」、「経営の透明性」、そして「ステークホルダーとの真摯なコミュニケーション」が前提にあります。

市場の変化や技術の進化に対応する革新的な思考は、新しい製品・サービスや新たなビジネスチャンスを生み出す原動力となり、市場における競争力強化に役立ちます。
また、革新的なアプローチで新しい価値を顧客に提供できれば、顧客満足度のさらなる向上が期待できます。
経営の透明性を確保することは、企業とステークホルダーが企業の価値観や目的を共有し、共同で価値を創出する基盤となります。ステークホルダーとの良好な関係を築くには、何度も繰り返しますが、透明性を確保したうえで、真摯なコミュニケーションを根気強く行うことが大事です。

ビジネス目標を達成するためには、これらの継続的な取り組みが重要です。ビジネスを取り巻く環境は常に変化しているため、その都度適応し、成長する姿勢が求められます。未来のオーナー企業は、時代の変化や新しい課題に柔軟に対応しながら、持続的な価値の創出を追求する経営を目指すべきです。

また、未来に渡り企業の成長・発展に邁進していくには、オーナーは自身を磨き、従業員に畏れられながらも愛されるという二面性を持つことが必要です。物を与えて喜ばせるのではなく、オーナー自身がビジョンや考えを周囲に浸透させて共感を生むことが大事です。従業員ひとり一人を大切に扱い、自分の経営姿勢や目標に向かって努力している姿を理解してもらいながら全体の士気を上げることが、企業の成長・発展につながっていくのです。

 

まとめ

オーナー企業は、オーナーの意向がすぐに経営に反映されやすく、市場の変化やリスクへの対応も速やかに行える環境が整っています。
しかし、オーナーが権力と権威を持ち、自分の持つ情報が一番であると考えて自身を客観視する術をもたずに経営を独占してしまうと、従業員との間にギャップが発生し、将来の成長や持続的な企業経営が難しくなります。
また、内部統制や内部監査の体制の構築や見直しを放置していると、経営の透明化が不足したり業務の効率化が遅れてしまったり、競争力低下やステークホルダーの信頼性低下につながります。また、内部の不正が発覚し、経営に大きな悪影響を及ぼすという事態に発展し
かねません。

オーナー企業は、ガバナンスを強化し、意思決定のプロセスや理由の透明化に努め、責任の所在を明確にすることで、ステークホルダーとの良好な関係性を築く必要があります。
それにより市場における優位性を確保でき、企業価値の向上につながります。

未来のオーナー企業が目指すべきは、持続可能な経営の体制作りとその継続です。オーナーは目標に向かって努力する自身の姿を見せ、愛されるオーナーを目指すことが企業の成長・発展の礎となりえます。

お気軽にご相談・お問い合わせください