Column コラム

Vol.25【企業信頼を揺るがす~風評被害・誹謗中傷・誤報道への効果的対応】

今回のコラムでは、以下のラインナップでお送りいたします。


風評被害・誹謗中傷・誤報道の定義とそのリスク

ビジネスにおいて、企業の信頼性は非常に重要です。しかし信頼は、風評被害、誤報道、誹謗中傷など、事実無根の内容によって損なわれてしまうことがあります。もしそのような事態に陥れば、企業にとって大きなダメージが発生し、修復には多大な労力と時間が必要となります。
最近では、東京電力福島第一原発の処理水放出による風評被害(2023年)で、中国や香港が日本からの水産物の輸入を停止したり、マクドナルドがパレスチナ人への残虐行為に加担しているイスラエルを支持している、といった誤情報(2023年)により、中東地域での事業に影響が出たりなど、風評被害や誤報道が企業へ与えるダメージは甚大です。
直近だと本年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に対しての風評被害も懸念されるところです。
本メルマガでは、風評被害・誹謗中傷・誤報道への効果的な対応方法と、信頼を揺るがす事態を未然に防ぐための対応策について、弊社顧問である西岡敏成氏に話をうかがいます。
※本内容は、西岡氏へのインタビューを基に再編集したものです。
 

1:風評被害・誹謗中傷・誤報道の定義

 
風評被害、誹謗中傷、誤報道は、企業や個人の評判に対する深刻なリスクをもたらします。
風評被害とは、根拠のない噂や誤解が原因で、企業や個人の名声が不当に損なわれる状態を指します。
誹謗中傷は、事実ではない情報や悪意ある発言によって他者の名誉を傷つける行為を意味し、風評被害を引き起こす主な原因のひとつです。
誤報道は、メディアが不正確な情報を公開することで、企業や個人に損害を与えます。
現代社会では、情報がデジタルメディアを通じて瞬時に広がるため、一度発生した風評や誹謗中傷は、企業のブランドイメージや信頼性に深刻なダメージを与えることがあります。そして、一度失った信頼を取り戻すには膨大な時間とコストがかかります
そのため、企業はこのようなリスクに対応するための効果的な対策を講じ、自社の評判を保護することが重要です。
 

2:風評被害等が企業に与えるリスク

 
風評被害等によるリスクは、以下のようなケースが想定されます。

・顧客ロイヤルティの喪失
風評被害によって顧客の信頼が失われると、ロイヤルティが低下したり、新規顧客獲得が困難になります。

・財務的な損失
風評被害によって売上減少や株価下落などにつながり、直接的な財務的損失が発生することがあります。風評被害による財務的な損失が長期化すれば、最悪の場合経営破綻に陥ることもあります。

・法的なリスク
風評被害が法的な問題を引き起こし、名誉毀損や虚偽表示に関する訴訟リスクを招くこともあります。

・ステークホルダーとの関係悪化
風評被害によって、従業員のモチベーションや生産性にも悪影響を及ぼしたり、ビジネスパートナーや投資家との関係が悪化し、将来のビジネスチャンスが損なわれたりする恐れもあります。

・人材獲得の機会喪失
企業の評判が悪化すると、採用予定者の辞退や優秀な人材の確保が困難といった、新たな人材獲得の機会を喪失するかもしれません。
 

3:風評被害等の拡散の要因

 
・外部の発生源による拡散の要因
外部からの風評被害や誹謗中傷、誤報道による拡散の要因には、さまざまなケースがあります。
まず、SNSユーザー、特に影響力のあるインフルエンサーが誤解を含む情報を拡散することで、広範囲にわたる影響を及ぼすことがあります。
また、オンライン掲示板やフォーラムでは、匿名性が誤情報や根拠のない噂が拡散しやすい環境を作っています。競合他社や悪意を持った第三者による意図的な偽情報の流布も問題となることがあります。

・企業活動、または従業員個人に起因する拡散の要因
企業活動や従業員個人に起因する風評被害や誹謗中傷、誤報道の拡散の要因も多岐にわたります。
例えば、企業が公開した広告やポスターなどで、LGBTや人種差別などの人権侵害と受け取られる内容が含まれていることが問題になったり、従業員個人による誤った情報の外部への漏洩や、SNSでの不適切な発信、顧客や取引先に対する不適切な態度や言動が問題となることもあります。

 

4:具体例

 
具体的な風評被害や誹謗中傷、誤報道の実例には、さまざまなものがあります。
例えば、ある大手企業が社会的責任を果たすための決定を発表した際、その意図が誤解されソーシャルメディア上でボイコットの呼びかけが行われたり、食品企業に対する非自然な原材料を使用しているといった根拠のない噂が、消費者の間で不安を煽ったりするケースがあります。
また、健康への影響に関する誤報が拡散し、製品の販売に大きな影響を及ぼした例や、環境問題に関する誤報がソーシャルメディアで拡散され、実際には環境保護に積極的な企業の評判を落としたケースもあります。
企業は情報の正確性を確保し、誤情報に迅速かつ効果的に対処するための戦略を立て実行することが重要です。

 

 


風評被害・誹謗中傷に対する対応策

LINEUP1では風評被害・誹謗中傷のリスクや発生源、具体的実例について見ていきました。LINEUP2では、風評被害・誹謗中傷が起きないようにするための予防策、そして万が一発生してしまったときの対応策についてお伝えします。
風評被害・誹謗中傷が起きてしまった際には迅速な対応が必要です。あらかじめ頭に入れておき、いざという時に備えましょう。

 

1:予防策

 
風評被害、誹謗中傷を予防するためには、社内でのSNS利用に関するガイドラインを策定し、従業員に適切な情報発信を行わせるための教育を施すことが重要です。
また、問題が発生した際に迅速な対応ができるよう、各部署が連携し、情報共有体制の確認と報告窓口の一本化を図っておきます。
さらに、ソーシャルメディアやオンラインメディアを常時監視・モニタリングし、自社に関連する情報に即座に反応できる体制を整えます。負の情報が発信され、エスカレートしそうであると検知した場合は、すぐに適切な対応を行います。これらを踏まえ、風評被害や誹謗中傷に対するリスク管理プランを作成し、潜在的なリスクに備えましょう。
また、普段から社内外のコミュニケーションを強化し、正確な情報の共有を徹底することで、誤解や誤情報の発生を予防します。これにより、誤情報源の発生自体を抑制するとともに、ステークホルダーとの良好な信頼関係を維持にもつながることで、誤情報が発生してしまった際にもダメージを最小限に抑えられます。
これらの予防策は、風評被害や誹謗中傷に迅速かつ効果的に対応するために不可欠です。
 

2:発生時の対策

 
前述の通り、風評被害・誹謗中傷の発生時には迅速かつ適切な行動が求められます。
誤解や誤情報を正すためには、公式声明を準備し、適切なタイミングで発表することが重要です。そのためにまず、事実確認を通じて、問題の情報収集と危機評価を行い、投稿内容の真偽を明らかにします。
また、名誉毀損や業務妨害が明白な場合は、法的措置を含めた損害賠償請求を検討することも有効です。これは弁護料等金銭的にも負担が大きくなる可能性がありますが「事実無根」であることを証明することで、企業の信頼棄損をやわらげたり信用回復に大きく役立つ場合もあり、費用を上回る効果が期待されます。
また、ステークホルダーやメディアとのコミュニケーションなどの危機管理広報も非常に重要です。透明かつ一貫性のある説明を通じて誤解を解消したり、風評被害のもととなる情報を訂正してもらうよう働きかけたりします。
最後に、社内コミュニケーションを強化し、従業員の不安を払拭し、全員が一丸となって事態の収束に努める体制を整えることが大切です。

 


誤報道に対する対応策

LINEUP2では風評被害・誹謗中傷に関する対応策について見ていきました。LINEUP3では、誤報道に対する対応策、チェックポイント、抗議文の作成などに関してお伝えします。
誤報道による損失を最小限に抑えて企業の信用とイメージを守るため、適切な対策を行えるようにしましょう。

 

1:誤報道に対する対応策

 
誤報道が明確である場合は、断固たる態度で対応すべきです。しかし、見解の相違と捉え得るような要素がある場合には、自社の立場を明らかにしながらポジティブなイメージを慎重に構築していくことが重要です。
また、いずれにしても、まずは社内に誤報道であることを迅速に伝え、従業員の不安を解消する必要があります。
また、社外への迅速かつ正確な情報提供、公式声明の発表、関連するステークホルダーとのコミュニケーションも重要です。これらを行うためには、誤報道による影響を正確に把握し、原因を究明することが必要です。
さらに、誤報道により企業の信用が失墜したり、経済的損失が生じたりする恐れがあるため、誤報道の内容や背景を理解したうえで、法的措置を含めた対策を検討することが重要です。

・誤報道に対するチェックポイント
☑実際に明らかな誤報道であるか、単なる見解の相違によるニュアンスの違いなのかを正確に判断できたか
明らかな誤報道かどうかで対応が異なるので、正確に判断することが重要です。

☑誤報道に対処する際には、その影響が企業経営やイメージに与える影響がどれほど大きいか
イメージダウン、取引上のダメージ、従業員の士気低下などの影響を考えます。

☑取材時に誤報道や不当な噂を断固として否定できるように準備できたのか、準備した内容を正しく理解してもらえるのに充分な説明ができたのか
取材対応を通じて、記者に対して誤解、理解不足、偏見、先入観などの不安が感じられる場合は、取材終了時にこれらの不安を解消するために、再度確認を行うことが有効です。

☑取材時のコミュニケーションには、平易でやさしい言葉を使用し、丁寧な説明ができたか
相手との不必要な論争や敵対的感情の発生を避けるために、言葉選びやトーン調整を心がける必要があります。

これらのチェックポイントを踏まえ、誤報道に対して迅速に対処し、企業の信用とイメージを守るための体制を整えることが求められます。

・明らかな誤報道である場合のチェックポイント
☑誤報道であると自社が判断するに至った具体的な箇所を正確に把握・チェックしたか

☑広報担当者や弁護士、危機管理広報アドバイザーなどのアドバイスを受け、抗議文書を作成したか

☑抗議文書作成後に広報担当者を通して、取材に来た記者に抗議文書を提出する旨の事前連絡をしたか

☑メディアの責任者(担当デスク、編集長、担当部長など)に対して、新聞なら3日以内、テレビや週刊誌なら1週間以内など、適切な期間内に抗議文書を持参し、回答期限を設けて誤報道に対する修正や訂正を求めたか

☑提出後は、指定した期日までにメディアから適切な回答書を受け取ったか

このようなプロセスを経て、不適切な報道に対する企業の立場を明確に表明することで誤報道の是正を行います。

・抗議文書作成上のチェックポイント
☑表題は、「抗議文」「訂正記事要求書」ではなく、「…記事に関する申し入れ書」としているか
抗議文は攻撃的な印象を与え、対話よりも対立を想起させてしまいます。一方で、「申し入れ書」という表現は、誠意ある回答と協力を求める、より柔らかく建設的なアプローチと捉えられます。

☑明確な事実を提示しているか
誤報道の内容と事実の相違点を箇条書きにして整理し、事実と異なる部分を具体的に指摘し、正しい情報を詳細に記述します。
また、見出しと本文の間に矛盾や誤解を招く表現がないかを確認することも重要です。

☑誤情報が企業の信用や評判に与える悪影響を具体的に訴えているか
例えば消費者や取引先からの問い合わせ増加、社内の混乱、監督官庁からの不利な扱いや市場での信頼喪失など、誤報道によって生じた具体的な影響や損害などです。
また、正確でない報道が一般読者に誤解を招くことや、報道機関の社会的責任と使命の大きさを指摘することも重要です。

 

2:監視と評価調査

 
「監視と評価」は、企業や製品に関するメディアや公共の情報を常時監視し、その影響を評価するプロセスです。これにより、風評被害や誤報道を早期に発見し、適切に対応するための重要な手段です。

・監視(Monitoring)
新聞、テレビ、ラジオ、オンラインニュース、ブログをはじめとするメディアの内容を継続的にチェックすることで、企業に関する情報を追跡します。
また、ソーシャルメディアでの言及や意見を追跡したり、一般の人々の口コミ、レビューなどを監視したりして、企業や製品に関するイメージや反応を把握します。

・評価(Evaluation)
評価活動は、監視した情報から得られたデータをもとに、企業の評判やブランドイメージに与えられた影響の程度を分析する作業です。それには「影響評価」、「対応効果の評価」、「リスク評価」を行い、対策を検討します。
影響評価では、情報が企業の評判に与えた実際の影響を把握します。
対応効果の評価では、企業の対応策が状況をどのように改善したかを分析します。
さらにリスク評価では、訴訟、顧客離れ、株価への影響など、現在の情報によって将来的に企業にどのようなリスクがもたらされるかを予測し、適切な対策を検討します。
これらの監視と評価のプロセスは誤報道や風評被害の早期発見と適切な対応、ならびに将来リスクの最小化に大変重要です。

 

まとめ

 
企業は風評被害、誹謗中傷、誤報道といった課題に対して、慎重で戦略的な対応を行う必要があります。これらは企業の評判、信頼度に深刻な影響を及ぼし、経済的損失や顧客信頼の喪失につながる恐れがあるからです。
風評被害、誹謗中傷、誤報道の対応を迫られた際には、迅速な事実確認、正確な情報公開、透明性と一貫性のあるコミュニケーションが対策の鍵となります。
また、風評被害等の早期発見や適切な対応のために情報の監視と評価調査を行い、場合によっては法的措置をとることで、企業が持続可能な成長を遂げ良好なイメージを維持するための対策を行いましょう。
末筆ではございますが、令和6年能登半島地震により、石川県をはじめとする北陸地方で甚大な被害が発生しました。この地震で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

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